01. 自慢にしていたキレイな髪は、バッサリと見る影もなく。

(薫流ちゃん←劉邦)

クセのない茶に近い髪。腰まで届いていた長い髪を切った。
ためらいもなく、鋏を手に肩までに切り落とした。
自棄でも、泣くでもなく淡々とした顔が怖かった。
チビの頃から、伸ばしていたストレート。
密かな自慢にしていたのを、知ってた。
ザクザクと規則的なリズムを刻む鋏の音。
感慨のない眼差し。毛先が不揃いなこともおかまいなし。

頬に伝う涙が冷淡を溶かした幼い素顔。
悔しいでも、悲しいでもない空っぽの面。
俺がもっとも見たくなかった顔を、覚えている。

ただ、短く、頭を軽くしていくのを見ていた。
何を吹っ切りたかったのか、その理由を俺は知ってる。
それを作った殴りたい奴を、忘れたくて、奴の死を認めたくないからだと。

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written by ナルセ